BODY AND SOUL

BODY AND SOUL_a0002763_1194513.jpg先日投稿した私の仕事遍歴について(2)にて、20代から30代にかけて、非常にたくさんの本を読んだと書きました。

あの頃に読んだ本のいくつかは、その後の私の人生観や仕事観に大きな影響を及ぼしました。
いまそれらを読み返すと、療術家という仕事に就いた"原点"のようなものが感じられます。

そこで、通常の"本について"という記事とは別に、それらの本をご紹介したいと思います。

「BODY AND SOUL」は、ザ・ボディ・ショップの創設者であるアニータ・ロディックさんの著書です。
1992年に刊行された本で、アニータ・ロディックさんがボディ・ショップを立ち上げる軌跡を追いつつ、彼女のビジネス観が熱く綴られてています。



冒頭の一文が強烈です。

私は美容ビジネスが嫌いです。とうてい叶わない夢を売る化物のような業界です。嘘はつく。騙す。女性を食い物にする業界です。その主な売り物は何かといえば、パッケージという名のごみです。エリザベス・アーデンがかつて、化粧品業界は「世界でもっとも卑劣なビジネス」だと評したのも、もっともです。
私は当時、大手の印刷会社に勤務していました。
印刷会社は、社会にとってなくてはならない、たいへん重要な役割を担っています。
しかし、売上や利益を追求するあまり、もしかしたら"ゴミ製造"に加担しているのではないだろうか・・・
規模の拡大のみを目指した代償として、大切なものを失ってはいないだろうか・・・
そのことに目をつぶって、自分たちをだましながら仕事をしてはいまいか・・・
そういう思いを強く持つようになりました。

仕事に愛と哲学と感動が必要だと考えるようになったのは、こういう思索の結果です。

さて、この本は見出しだけを追っても、とても刺激的で、考えさせられる内容です。

皮肉なことにこの業界はひとにぎりの
パワフルな女性たちによって築かれたのですが、
問題の一端は現在それが男性に支配されていることです。

・・・

不安につけこんで販売するのは道徳に反しています。
自分たちの体について女性が
常に不安を抱くようにしむけるのも悪徳です。
商品について奇跡のような効き目があると、
お客さまを騙すのは悪徳です。
40歳の女性のシワ防止クリームを売るのに、
若さあふれる16歳の少女の写真を使うのも悪徳です。

・・・

あらゆるビジネスが「女性」の考え方、
すなわち愛、思いやり、直感
といった資質で動かされれば、
計り知れない改善がもたらされるでしょう。

・・・

私はビジネスをやるにあたっては嘘はつかないという、
一種のたしなみをもって始めました

・・・

私がビジネスについて学んでいたら、
成功しなかったろうと、
心底思います。
アニータ・ロディックさんは、正直に、誠実に、情熱的に仕事をすること、そしてそのベースには愛と思いやりが不可欠であることを説いています。
そのやさしい眼差しは、人間だけでなく、動物や自然、そして地球に向けられています。
これまで男性主導で推し進めてきたビジネスのあり方に対して疑問を呈し、真っ向から挑戦をされました。
そして、最先端のビジネスと自然の調和という難しい課題に対して、具体的な答えを示してくれました。

アニータ・ロディックさんは、自分の足で世界中を駆け回り、自然で安全な材料、手法を探し求めました。
主には伝統的なものの中にそれらを見出し、フェアな取り引きを行い、製品化しました。
そして一般の化粧品会社がやっているようなマス広告は一切行わず、店舗を増やし、ビジネスを育てました。

私がいま療術家として自然であることを第一に考え、調和を何より重んじるのは、この著書で語られたアニータ・ロディックさんのビジネス観、そしてそのビジネスモデルやスタイルに少なからず影響を受けていると思います。
療術業という古典的で前近代的な業種が、最先端の健康ビジネスを担うであろう可能性を確信できるのは、彼女の偉業を目にすることができたからではないか・・・そんな気さえします。

知らなかったのですが、アニータ・ロディックさんは一昨年に亡くなられたそうです。
彼女の情熱と偉業に心から敬意を表すとともに、私たちに勇気と希望を与えてくれたことに、心から感謝をいたします。
彼女の灯した火が、たくさんの人の心に灯り続けますように。


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by hotshark | 2009-07-30 20:48 | 回顧録
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