「脱力」の極意はすべてに通ず

「脱力」の極意はすべてに通ず_a0002763_484324.jpg「脱力」の極意はすべてに通ず―練気柔真法 闘技を超える武の真髄
・著者:島田明徳
・1996年6月20日 第1刷発行
・発行所:BABジャパン出版局

別の本を探しに本屋へ行ったときに見つけた本。
本との出会いは、こういう場合が多い。

著者の島田明徳さんは、あらゆる武術や格闘技を経験し、究めようとされた。
その中から武術を稽古する本当の意味を見出し、新たに「練気柔真法」なる心身調整メソッドを開発された。



この著書は、「練気柔真法」をいかにして編み出したか、それがどのようなものであるか、その経緯と概要が述べられている。
具体的なメソッドは少ししか紹介されていないが、武道や武術とは何であるか、現代社会においてそれらを学ぶことにどのような意義があるのか、それがたいへんわかりやすく著されている。

以下は、著者が陳驢春老師に陳氏太極拳の指導を願い出たときに、老師から言われた言葉だそうである(同著p.3より引用)。
「きみが人と闘うために、武術を学ぼうとするなら私は君に武術は教えない。なせなら、人は人を傷つけるためにこの世に存在しているわけではないからだ。ゆえに、現代において武術のもつ役割とは人と闘うためのものではない。武術とは本来、自然の力、宇宙の法則をその動きの中に表現しようとするものであり、武術を学ぶということは、宇宙の法則を自分の身体で表現することであり、真の武術とは宇宙の法則を表現できるように組み立てられ、それを達成するためのシステムが正確に伝承されている。・・・(中略)・・・だから、真の武術を学ぼうとするなら、今までに身につけてきたさまざまな自分の習慣を打破し、自己と宇宙が一体であることを体得せんと欲する高い目的意識をもっていなければならない」
合気道開祖である植芝盛平翁は、「合気道の極意は、己を宇宙の動きと調和させ、己を宇宙そのものと一致させることにある」とおっしゃっているが、それと同じことではないかと思う(「武産合氣」参照)。
著者が最終的に学ばれたのは中国伝統武術であるが、思想や手法については日本の伝統武術と共通するところが多い。

今まで漠然とやってきたことの本当の意味を発見したり、技の裏づけができたり、学ぶところが多い著書であった。
合気道を稽古されている方にも、ぜひ読んでいただきたい一冊である。
by hotshark | 2007-02-04 04:02 | 本について
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